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アカデミー賞の各賞受賞で話題の『パラサイト 半地下の家族』。
さまざまな感想、レビュー、考察が行われていますが、私は現役小説家でもありますので、プロット的な観点から各ポイントごとにレビューいたします!
以下、ネタバレを含むレビューとなりますので、未見の方はご注意ください。
冒頭~序盤
経済格差がテーマになっているように、冒頭では半地下で暮らす家族たちの生活が描かれています。半地下住宅そのものは、韓国ではよく見られる形態だそうです。
一家そろってとにかく仕事がなく、ピザ屋の箱を作るという内職的な仕事で日銭を稼ぐという有様。箱の作り方を知るのにYouTubeを参考にしているのは、今日的で印象に残りました。
冒頭~序盤にかけて、主要人物の紹介と彼らの現状がよく説明できています。
そんな状況下にいる家族の前に登場したのが長男・ギウの友人。その彼は「留学に行っている間、ギウに家庭教師の仕事の代わりをしてほしい」と依頼します。
ここが第一のターニングポイント。物語が一気に動き始めるきっかけになります。
ギウに依頼した理由は、「ダヘ(教え子)と今後付き合いたいと思っているが、同じ大学の男友だちに頼むのは危険だから、お前に頼みたい。お前を信じているから」とのこと。
そこで家庭教師先に向かうギウ。そこは高級住宅街で、IT系の会社を経営するパク・社長一家の大豪邸でした。
うまいこと代役の教師として採用されたギウは(しかもダヘはギウにメロメロになっちゃう)、ダヘの弟・ダソン絵の才能を伸ばしたいと悩むヨンギョ夫人に、「いい人がいる」と言って推薦します。
それがギウの妹・ギジョン。ギジョンは偽名を用いて身分を偽り、絵の家庭教師として採用されることに。
ここが第二のターニングポイントですね。
中盤
その後、予想どおりに父・ギテクはギジョンの策略で首になった運転手の後任、母・チュンスクは一家の策略で首になった家政婦の後任として、この家に取り入ることに成功します。
しかも彼らは4人とも赤の他人という設定にして、一家であることはばれないよう仕事に励みます。
そしてある日、社長家族が息子のダソンの誕生日に合わせてキャンプに行っている間、一家は豪邸で飲めや食えやの大宴会を催します。
ここまで、何もかもがうまくいっています。
その予測は早々に実現します。
ここが第三のターニングポイントであり、物語中盤で全体を大きく転換させる「ミッドポイント」です。
宴会が続く豪雨の中、現れたのは解雇された元家政婦・グンファン。
「忘れ物がある」と言って豪邸内に入れてもらったグンファンは、地下室へと移動します。そして驚くべき事実が判明します。それは…、
地下室の下にシェルターがあり、そこで元家政婦の夫・グンセが生活をしていた!
という展開。
「台湾カステラ」のお店の失敗でできた借金の取り立てから夫のグンセを逃がすため(ちなみに父・ギテクも台湾カステラの商売に失敗しています)、社長一家には知らせずに地下シェルターに住まわせていたのです。
半地下ならぬ、地下シェルター。下層で生活する家族のさらに下層で、本当に寄生しながら生きながらえている夫婦がいたのです。
このことを話さないでと頼む元家政婦のグンファンでしたが、一家4人がこの家に寄生していることを知り、彼らの発言を動画に撮影します。それを社長にばらすと脅された一家は、夫婦に酷い目に遭わせられます。
ところが社長一家が豪雨のためにキャンプを切り上げ、8分後に帰ってくることが判明。
ここが第四のターニングポイントになるでしょう。
一家が帰宅しますが、元家政婦夫婦を地下シェルターに閉じ込め、なんとか脱出することに成功したギウ、ギジョン、ギテク。
しかしその直前、父・ギテクは社長夫婦の会話をテーブルの下で聞いてしまいます。その内容は「体臭が気になる」というもの。
ギテクはショックを受けていましたが、これが後の伏線となります。
終盤
豪雨の中、半地下の自宅に帰る家族でしたが、雨が氾濫して自宅が水没してしまいます。
3人は体育館らしき場所で一夜を過ごしますが、翌日に社長一家がパーティーをするというので、仕事に駆り出されます。
一方、地下シェルターにいる元家政婦の夫であるグンセは、電球のスイッチを利用したモースル信号を送ります。唯一、弟のダソンが読み取ることができましたが、これはそのままスルーされてしまいます。
グンセは初登場時から精神が不安定に見え、このときからさらに異常行動を取るようになっていきます。
パーティーが始まると、ギウは2階の教え子のダヘの部屋で、彼女に「俺はここが似合うかな」と吐露します。
しかしギウは地下にいるはずの元家政婦夫婦を始末しようと、地下シェルターに向かいます。
これが第五のターニングポイント。
それなのに石を持って(これは物語序盤で友人にもらった石)、地下シェルターに向かってしまいます。これが直後の悲劇を生んでしまいます。
ギウは夫・グンセの反撃を受け、頭を石で割られて意識不明に。
気の触れたグンセはパーティー会場である庭に乱入し、包丁を持って暴れ回り、ギウの妹・ギジョンの胸を刺します。
その際、社長はギテクに車のキーを投げろと命じます。刺されたギジョンを介抱する父でしたが、キーを投げました。しかし一家の母親・チュンスクに襲いかかったグンセが倒れ込んできて、キーはグンセの下に。
そしてチュンスクは鉄串でグンセの脇腹を刺します。
社長はグンセの下にあるキーを取ろうとして、その臭いに「うっ」と言いながら顔を背けます。
そのとき、「体臭が気になる」と言われていたギテクのスイッチが入ってしまいました。ギテクはあろうことか包丁を手にして、社長を刺してしまいます。
ギテクはその場から逃亡し、阿鼻叫喚の中、このシーンは終了します。
結末
数週間後、脳の手術で一命を取り留めたギウは母・チュンスクとともに文書偽造および住居侵入の罪で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けることになります。
妹のギジョンは胸の傷が致命傷となり死亡したことが、ここで判明します。社長一家は豪邸を手放し、いずこかに去りました。
父・ギテクの逃亡により、警察に尾行されていたギウでしたが、落ち着いてきたある日、雪の高台から旧社長家の豪邸を見下ろしていたギウは、家の電灯が点滅していることに気付きます。
これが最後のターニングポイントです。
それは父・ギテクが送るモールス信号でした。行方不明になっていたギテクは、ギウ一家以外に存在を知らない豪邸の地下シェルターに潜んでいたのです。
ギテクは豪邸の新しいの家主の冷蔵庫などから食べ物を拝借つつ、生き延びていました。
父からの発信を読み取ったギウは、大金持ちになってギテクを助け出す決意をし、それを実行するというシーンを思い浮かべながら、今もなお半地下で生活を続けているというところで終幕。
まとめ
以上、プロット的な観点でターニングポイントとミッドポイントを間に挟みながらレビューしてきました。
総じて面白いエンターテインメント映画でした。
主人公一家が他人の家を乗っ取る犯罪者ということで、共感しにくい方はいるかも知れませんが、彼らは結末でこれまでの代償を払っています。
父親は地下シェルター生活、妹は刺殺され、母親は夫と娘を失い、長男は大怪我をしてしまいました。ギウは脳の手術をしており、実はこの父親のモールス信号という映像も妄想をうつしたものなのかもしれません。
この映画は韓国の経済格差をテーマにしているとのことでしたが、その点についてはそこまで深く斬り込んではおらず、質の高いエンターテインメント作品というのが個人的な感想です。
なにはともあれ、必見の作品であることに間違いはないでしょう!
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