1996年、『藪燕』で第76回オール讀物新人賞を受賞してデビューした乙川優三郎(おとかわ・ゆうざぶろう)さん。2002年に『生きる』で第127回直木賞を受賞しました。
そんな乙川優三郎さんの新刊情報をまとめました!
それぞれ最新刊から最大5冊を紹介しています。
※新刊予定については新刊情報が入り次第、「1.」に記載します
それでは、簡単なあらすじを含めてそれぞれ見ていきましょう。
乙川優三郎の単行本新刊情報
1.『立秋』(2024/9/11発売)
最新刊
小学館
<あらすじ>
諏訪湖の花火大会の日、光岡は駅に降り立った。漆工の涼子とのつきあいは十年以上になる。二人の生が交差したきっかけは、漆器だった。シンプルで控えめな佇まいと、官能的とも思える光沢に魅かれ、光岡は盛器を購入。伝統工芸展の入賞作品であった。そして、精神の疲れをいやす旅で、塩尻・奈良井に赴き、光岡は漆器店で作者の涼子と出会う。若い涼子の漆器創作に刺激を受け、彼は、かつて文学賞を受賞したものの、挫折していた小説執筆を再開した。
以来、二人は造形や執筆の傍ら、時に二人で憩いつつ、深い想いを育んできた。やがて、涼子は漆芸作家として、パリで開催される漆器二人展に招聘される。もう一人は、沈金や蒔絵の輪島塗りの男性作家だという。成功したパリの二人展を契機に、光岡は人生の秋期を意識するが……。
こちらが単行本の最新刊になります。
2.『クニオ・バンプルーセン』(2023/10/18発売)
新潮社
<あらすじ>
「ニッケル(5㌣硬貨)」は「安い命」を意味し、父の相棒のパイロットはベトナム戦争参戦国のフィリピン人でした。横田、グアム、福生といった米軍の基地の中で育ったクニオ・バンプルーセンが太宰や谷崎より面白く思い、三島や川端より身近に感じたのは石坂洋次郎と『青い山脈』でした。
就職先は東京の飯田橋にある、社長を入れて社員数人という文芸出版社の泉社。主力商品は海外文学の翻訳で、日本文学を愛するクニオは入社当初は心ならずも翻訳を手がけるものの、やがて新人作家の発掘と育成、大物作家との伴走、10数年の歳月をかけた大作に取り組みます。
編集者と作家、出版社の実像と理想像が描かれ、格調に充ちたビルドゥングス・ロマンです。
3.『潜熱』(2022/10/15発売)
徳間書店
<あらすじ>
昭和三十年代、中央高速が走る信州の小さな街。野心を抱いた二人の青年は、上京を夢見る。畳屋のせがれ・相良は最初、広告代理店にもぐり込み、コピーライターとして、一歩を踏み出す。母子家庭の大庭は俳優を目指す。共同生活が始まり、大庭は俳優として屈指の劇団に合格。夢の実現への開始である。相良は入社後10年、応募したコピーが宣伝会議賞を受賞した。コピーライターとして大きな賞もとったが、一行の表現からはみ出してしまう思いが募り、作詞の世界に自分の挑戦を見出す。そして、作詞の世界でも地歩を築きつつあったが、本や映画、ライブスポットに栄養補給を求めた。ハーフのジャズ歌手ロッティに恋し、結婚生活が始まった。
作詞家としても仕事に油の載ってきた時期、子どもが誕生し、命の連鎖を実感した。しかし、妻のロッティが娘のジェニィを連れて母親の住む西海岸に出かけた不在時に大庭の元恋人陽子と再会。親密な関係が続いた。
やがて、娘のジェニィはロスに進学することになり、ロッティは、娘と一緒に暮らすという。離ればなれの家族の隙間を埋める愛は続くのか。
相良は妻と娘のジェニィの暮らすロスへ赴く。久しぶりに会った娘は美しく成長していたが、ロッティとの距離は埋まらないままだった。
作詞家から、小説へ創作の重点を移しつつあった頃、故郷の寺を継いだ友人・保科正道の訃報が届く。相良は小説が完成すると、宇田川陽子に送り、20年来のなじみのレストランで、向かい合う。陽子からの核心をついた感想は貴重なことばであった。
作詞家から作家へ、新人賞への応募から始めた。そして受賞、夢は…。
4.『あの春がゆき この夏がきて』(2021/10/15発売)
徳間書店
<あらすじ>
「死んだ伯父さんが言ってた。汚いものばかり見ていると目も汚れる。そんなときこそ、美しいものを探せって」神木が画家に出会ったときのその言葉が、彼の運命を変えた。神木は忘れなかった。女性を愛し、芸術を愛しながら、浮浪児の孤独だけは忘れずにいたので、ときおり、自家中毒を起こした。
神木(こうのぎ)は、戦後、浮浪児から、画家だった養父に拾われ、「養子となった。芸大在学中、養父が死去。
全くの一人になった男が辿った道筋とは。出版社の装幀部に勤めていたが、その後、川崎にバーを経営。魅力的な女性と出会い、別れる。名手が書き下ろす一人の男の人生。
「変に優しいのよね。けっこう優しく裏切る」
彼は優しい男のまま別れようとしていた。人の人生までねじ曲げるような乱暴は好まなくなっていた。女は気を失うような刺激に飢えていたのだと思った。今の女には安堵の色が見えていた。
「私が男の人に真実を期待しすぎるのかしら、それとも男の人が私に真実を期待しないのかしら」ニューカレドニア生まれのマリエは神木の経営するバーに咲いた花だったが、とことん男を見る目がなかった。男に裏切られてきた女が見出したのは。
5.『ナインストーリーズ』(2021/6/23発売)
短編集
文藝春秋
<あらすじ>
満足? 後悔? 愉悦? 絶望?人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、定年間近の独身男の婚活、還暦過ぎの女友達二人、かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。
乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生模様を端正な文章で紡ぎます。
時代小説から現代に小説の舞台を移してからも大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、島清恋愛文学賞など数々の評価を得ている筆者による9つの物語。
単行本は以上です。続いて文庫の新刊を見ていきましょう!
乙川優三郎の文庫本新刊情報
1.『地先』(2022/12/8発売)
文庫最新刊、短編集
徳間書店
<あらすじ>
恋人と一緒の南国のリゾート。遊覧飛行の事故で、恋人のみが死亡。傷ついて故郷の海辺の町に帰ってきた女。自由な恋と仕事に人生を過ごした女が、海辺の町で、地に足着けて自分の夢を実現しようとする男と再会。ささやかな生きる希望が生まれる。…(「すてきな要素」)絵描きになる夢をあきらめ、平凡な主婦生活を送っていた幸代。娘の作品が美術展に入賞したため、上野に連れ立って出かけた。そこで、青春時代、芸術家としての才能を信じ、尽くしていた男が、街頭で絵を売っている姿をみる。動揺する幸代が帰宅して描いたのは…。(「言葉さえ知っていたら」)
御宿を舞台に描く『海の縁』『地先』など珠玉の8篇!
2019年の単行本の文庫化作品です。
2.『ある日 失わずにすむもの』(2021/12/8発売)
短編集
徳間書店
<あらすじ>
アフガン、ミャンマー、イラク始め、今現在、世界を襲っている不幸。そんな状況を予見したかのような作品!ある日突然、起こりうる近未来の戦争。
北米、ヨーロッパ、アジア、日本、世界各国に生きる人々の奪われゆく日々や、愛情、未来。誰にでも起こりうる恐ろしい状況。
明日には失ういとおしい生活を、無駄のない研ぎ澄まされた美しい文体で描く。
この小説の主人公は明日の私たちかも知れません。小説には力があると信じられる12篇!
2018年の単行本の文庫化作品です。
3.『麗しき花実』(2021/12/8発売)
徳間書店
<あらすじ>
文政5年、蒔絵師の娘・理野は、兄と共に松江から江戸の原羊遊斎の工房を目指した。羊遊斎の工房で、急逝したが、女の蒔絵師として、下絵から仕事が許される。工房の数物を作りながら、新しい美をもとめる理野。情念を込めた独自の表現を目指し、全てを蒔絵に注ぐ。
江戸琳派の酒井抱一、鈴木其一など実在の人物を絡め、描かれる美術工芸の世界と、やるせない恋。そして、職人魂を貫く潔い女の生き方が感動を呼ぶ。
ラストシーンで、其一の代表に連なる松江の山道からの風景が想像をかき立てる。凜と生きる女の潔さと情念が印象的な時代長編。
2010年の単行本の文庫化作品です。
文庫本の新刊情報は以上になります。
まとめ
それぞれおさらいします。
■単行本新刊
- 『立秋』(2024/9/11発売)
- 『クニオ・バンプルーセン』(2023/10/18発売)
- 『潜熱』(2022/10/15発売)
- 『あの春がゆき この夏がきて』(2021/10/15発売)
- 『ナインストーリーズ』(2021/6/23発売)
■文庫本新刊
- 『地先』(2022/12/8発売)
- 『ある日 失わずにすむもの』(2021/12/8発売)
- 『麗しき花実』(2021/12/8発売)
定期的に作品を発表している乙川優三郎さん。次作が楽しみですね。
それでは、良い読書体験を!
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