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さまざまな猫たちが登場し、活躍する小説がたくさんあります。
ほっこりしたり、泣けてきたり、はたまたハラハラしたり……とにかく猫が登場する小説を読みたい! という方に向けて、おすすめ猫小説を紹介いたします。
猫小説のおすすめ作品10作
1.『ブランケット・キャッツ』(重松清/2011年)
短編集
<あらすじ>
馴染んだ毛布とともに、2泊3日だけ我が家に「ブランケット・キャット」がやって来る。リストラされた父親が家族のために借りたロシアンブルー、子どものできない夫婦が迎えた三毛、いじめに直面した息子が選んだマンクス、老人ホームに入るおばあちゃんのために探したアメリカンショートヘア――。
「明日」が揺らいだ人たちに、猫が贈った温もりと小さな光を描く7編。
心温まる感動ストーリーが詰まった本作。
何気ない日常に小さな変化を与える重松清さんならではの筆運びが光ります。
2.『旅猫リポート』(有川浩/2017年)
<あらすじ>
野良猫のナナは、瀕死の自分を助けてくれたサトルと暮らし始めた。それから五年が経ち、ある事情からサトルはナナを手離すことに。『僕の猫をもらってくれませんか?』一人と一匹は銀色のワゴンで“最後の旅”に出る。
懐かしい人々や美しい風景に出会ううちに明かされる、サトルの秘密とは。永遠の絆を描くロードノベル。
主人公と猫との絆を切なく描く、有川浩さんの作品。
主人公サトルの秘密、そして猫との旅……泣ける猫小説としてオススメします。
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関連記事>3.『きりこについて』(西加奈子/2009年)
<あらすじ>
小学校の体育館裏で、きりこが見つけた黒猫ラムセス2世はとても賢くて、大きくなるにつれ人の言葉を覚えていった。両親の愛情を浴びて育ったきりこだったけれど、5年生の時、好きな男の子に「ぶす」と言われ、強いショックを受ける。悩んで引きこもる日々。
やがて、きりこはラムセス2世に励まされ、外に出る決心をする。きりこが見つけた世の中でいちばん大切なこととは?
読者からの熱烈な支持を受け、ついに文庫化。
西加奈子さんによる猫小説。
主人公と猫との素敵な関係は、時としてドキッとするほど濃密。それが西加奈子さんの手腕であることは間違いありません。
関連記事>4.『猫鳴り』(沼田まほかる/2007年)
<あらすじ>
ようやく授かった子供を流産し、哀しみとともに暮らす中年夫婦のもとに一匹の仔猫が現れた。モンと名付けられた猫は、飼い主の夫婦や心に闇を抱えた少年に対して、不思議な存在感で寄り添う。まるで、すべてを見透かしているかのように。
そして20年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えていた…。「死」を厳かに受けいれ、命の限り生きる姿に熱いものがこみあげる。
沼田まほかるさんによる20年もの時を紡いだ猫との物語。
ちょっと重いですが、心に響いてくる猫ストーリーを読みたい方に。
5.『書店猫ハムレットの跳躍』(アリ・ブランドン/2015年)
<あらすじ>
ニューヨーク、ブルックリンの書店を大叔母から相続した、三十代半ばのダーラ。堂々と書棚を徘徊し、緑色の目で冷たく客を睥睨する黒猫ハムレットが店のマスコットだ。ある日、ダーラは近所の工事現場で常連客の死体を発見してしまう。
その脇には動物の足跡が。最近、夜に外を出歩いているらしいハムレットのものなのか?名探偵猫ハムレット登場の、コージー・ミステリ第一弾。
海外の猫小説作品も紹介します。
コージー・ミステリーとはハードボイルドとは逆の意味を持ち、「日常的」とか「ライトな」という文脈で使われます。
殺人事件が絡んできますが、非常にライトな語り口と物語の運び方で、面白く読める猫ミステリー。
シリーズ化されていますので、気に入った方はぜひ続編も読んでみることをおすすめします。
6.『猫島ハウスの騒動』(若竹七海/2009年)
<あらすじ>
葉崎半島の先、三十人ほどの人間と百匹以上の猫がのんきに暮らす通称・猫島。その海岸で、ナイフが突き刺さった猫のはく製が見つかる。さらに、マリンバイクで海を暴走する男が、崖から降ってきた男と衝突して死ぬという奇妙な事件が! 二つの出来事には繋がりが?
猫アレルギーの警部補、お気楽な派出所警官、ポリス猫DCらがくんずほぐれつ辿り着いた真相とは。
こちらも若竹七海さんのコージー・ミステリー。
30人の人間、そして100匹以上の猫が暮らす猫島を舞台に起きる事件を解き明かしていきます。この設定を聞いただけでも猫好きにはたまりませんね。
続編もあります。
7.『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(万城目学/2013年)
<あらすじ>
かのこちゃんは小学1年生の女の子。玄三郎はかのこちゃんの家の年老いた柴犬。マドレーヌ夫人は外国語を話せるアカトラの猫。
ゲリラ豪雨が襲ったある日、玄三郎の犬小屋にマドレーヌ夫人が逃げこんできて…。元気なかのこちゃんの活躍、気高いマドレーヌ夫人の冒険、この世の不思議、うれしい出会い、いつか訪れる別れ。
誰もが通り過ぎた日々が、キラキラした輝きとともに蘇り、やがて静かな余韻が心の奥底に染みわたる。
不思議な話を得意とする万城目学さん。
本作もちょっとファンタジックな内容ですが、かつてあなたも経験した幼い頃の記憶や体験が、まるで今の経験のように感じられる不思議な物語です。
8.『ノラや』(内田百閒/1957年)
短編集
<あらすじ>
ふとした縁で家で育てながら、ある日庭の繁みから消えてしまった野良猫のノラ。ついで居つきながらも病死した迷い猫のクルツ―愛猫さがしに英文広告まで作り、「ノラやお前はどこへ行ってしまったのか」と涙堰きあえず、垂死の猫に毎日来診を乞い、一喜一憂する老百〓先生の、あわれにもおかしく、情愛と機知とに満たち愉快な連作14篇。
文豪・内田百閒による猫小説。
1957年と古い作品ではありますが、猫への愛情はいつの時代も不変。愛情たっぷりの書きっぷりに、泣けて仕方がありません。
9.『あたしの一生: 猫のダルシーの物語』(ディー レディー/江國香織 /2016年)
<あらすじ>
“あのひとへの、あたしの愛/それから、あたしへの、あのひとの愛/あたしは、あたしたちが一緒に暮らした日々の思い出を/あのひとの胸のなかにちゃんと蒔いておいた。/あたしがいなくなったあともその思い出があのひとを、なぐさめてくれるようにね。/けっきょくのところ、もんだいなのは愛ということ…”「あたし」と「あたしの人間」の、出会いから「あたし」の死までの17年と4カ月にわたる濃密な時間を、猫の視点で描いた感動的な物語。
江國香織のしなやかな日本語で贈る傑作、初の文庫化。ジュディー・キングの素晴らしいイラストレーション16点も完全収録!
猫の視点から猫の一生を紡いだ感動的なストーリー。
江國香織さんの訳もぴったりで、長い年月の間に起きたさまざまな出来事、そして最後の瞬間までを描いた物語が胸を打ちます。
10.『ねこだまり〈猫〉時代小説傑作選』(宮部みゆき他/2020年)
短編集
<あらすじ>
可愛らしくもときに怖ろしい、江戸の猫が勢揃い!お店の守り神である木彫りの猫がなくなり、その行方を捜す「猫神さま」(西條奈加)、長屋で一番偉い猫の“サバ”が、夫婦の揉め事を解決する「包丁騒動」(田牧大和)、臆病な火消しの男へ按摩が与えた猫頭巾に込められた恐るべき謎「だるま猫」(宮部みゆき)など、愛らしくも摩訶不思議な存在である江戸の猫にまつわる短編六作を収録。
令和を代表する女性時代作家の共演による珠玉のアンソロジー。
最後にアンソロジーを紹介します。
宮部みゆき、諸田玲子、田牧大和、折口真喜子、森川楓子、西條奈加の諸氏による猫小説短編集。
舞台は江戸。時代小説ですが、江戸には猫がよく似合います。どの猫も個性的で、作者の猫観も投影されている作品群は、一読の価値ありです。
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まとめ
- 『ブランケット・キャッツ』
(重松清/2011年) - 『旅猫リポート』
(有川浩/2017年) - 『きりこについて』
(西加奈子/2009年) - 『猫鳴り』
(沼田まほかる/2007年) - 『書店猫ハムレットの跳躍』
(アリ・ブランドン/2015年) - 『猫島ハウスの騒動』
(若竹七海/2009年) - 『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』
(万城目学/2013年) - 『ノラや』
(内田百閒/1957年) - 『あたしの一生: 猫のダルシーの物語』
(ディー レディー/江國香織 /2016年) - 『ねこだまり〈猫〉時代小説傑作選』
(宮部みゆき他/2020年)
以上の10作を紹介してきました。
実際の猫が千差万別であるように、どの作品に登場する猫も個性豊かで、すぐ目の前に存在しているかのよう。物語の中で、素敵な猫と出会えますように!